失敗談から学ぶ。治療院経営で重要なマーケティング戦略とは

治療院 マーケティング戦略

 

「失敗は成功の母である」、「賢者は歴史に学ぶ」─────。

昔からよく言われるように、成功を手にするために大切なのは、過去の他人の失敗を勉強して自分に活かすことです。

キラキラした成功体験や必勝法を理屈で語るのは簡単ですが、踏み台になるような失敗談(と、そこから学んだこと)を語ることは、経験者にしかできません。私が経営するあさがお整骨院の経験した大失敗のエピソードを包み隠さずお話ししますので、ぜひ皆さんの参考にして、成功を勝ち取ってください。

 

新たに生まれた心配の種

2010年代、日本中に柔道整復師養成施設が急増し、整骨院が全国に乱立し始めました。急激な市場の変化の影響を受けて、あさがお整骨院でも売上の低下に頭を抱えていました。

毎月の家賃の支払いも心配しなくてはならないような状況に陥ったとき、「何か新しい施策を考えなければ…」と焦っていたあさがお整骨院が思いついた答えの一つが、「施術の技術を向上させよう!」ということでした。

 

全国の勉強会に参加したり、高額な教則DVDを購入したり、とにかく時間もお金もどんどんつぎ込んで、大量の技術を取得しました。

 

結論から言うと、技術を身に着けたことは、残念ながら集客には直結しませんでした。ただ、施術の腕は間違いなく上がり、自分の自信にはつながりましたし、来院した患者さんには満足してもらっていました。

 

しかし、ここで予想もしていなかった新たな心配の種が生まれることになったのです。

 

それが、「技術がアップしたことで治療の質とスピードが上がり、患者さんの来院回数とリピート率が下がった」ということでした。

 

売り上げを上げるために身に着けたはずの施術技術が、逆に売り上げを下げる結果に繋がってしまったのです。

患者さんは喜んでくれるのは良いのですが、このままの状態は続けられないし、かと言って施術レベルを下げるなんて、もってのほか───。

 

予想外の状況に、再び頭を抱えてしまうことになってしまいました。

 

自分で考えた起死回生の新商品アイディア

また新しい施策を考えなければならなくなったこのとき、あさがお整骨院が考えついたのが、アンチエイジングを目指すための運動器具の導入でした。

 

症状が治ることで来院してくれなくなってしまうのであれば、治ったあとも継続して通えるコンテンツが必要です。「再発防止」をテーマにして運動指導を行うことで、続けて通ってくれるだろうと考えたのです。症状が出ないようになれば、患者さんも当然ハッピーになってくれると思いました。

 

どんな器具が良いかと考えているときに目に留まったのが、スポーツジムに設置してある振動マシンでした。乗っているだけで運動効果のあるこのマシンなら、手軽に使えて患者さんも引き留めやすいし、さらに高齢者やダイエット目的の方も呼び込むことができて、ぴったりだと思ったのです。

 

既存患者さんも呼び戻せる上に、新規患者さんも集客できるこの戦略に大きな自信が湧き、さっそく銀行から機器導入費用150万円と、広告費・運転資金50万円の、計200万円を借り入れました。

 

想定外の大失敗

まずはマシンの魅力を患者さんに知ってもらうことが大事だろうと考え、既存の患者さんへの無料体験から取り組みをスタートすることにしました。その効果が認識されてから、次に広告を打って新規の患者さんを集客する戦略でした。

 

さっそく、治療が終わった患者さんにマシンの無料体験をご案内したところ、患者さんは大喜び!二回以上通院してくださる方もいらっしゃり、戦略は大成功するかのように思えました。

ところが、ここで想定外の事態が発生します。

 

いざ、マシンを有料に切り替えたところ、患者さんの来院はピタっと止まってしまったのです。無料なら使うけど、お金を払ってまでやりたいことではなかったというわけです。さらに、数十万円の広告を打って募集したダイエット商品も、まったく見向きもされませんでした。

 

当時は、体重が増え過ぎたせいで膝を痛めている患者さんが多かったので、予防になるような商品は必ずヒットするだろうと考えていたのですが、的は大ハズレだったのです。

 

ただでさえ売り上げが下がっていたところに、さらに借金だけが残ることとなり、またまた頭を抱えてしまいました。

 

失敗の原因

鋭い方なら、もうお気付きかもしれません。

そう、この記事で書いているとおり、当時何か施策を考えるとき、私はいつも「○○だと思った」《自分目線の思い込み》を根拠にしていたのです。これが何よりの失敗の原因です。

 

つまり、客観的に調査した事実やデータではなく、自分の勝手な思い込みで動いていたのです。結局それは実際の患者さんのニーズに合っていなかったため、当然、売り上げには繋がりませんでした。

 

再発防止や症状の予防という発想は、理屈の上では間違っていないし、実際にターゲットに当てはまるような患者さんもいらっしゃいました。海外での成功事例もあります。ただ、そもそも日本には「病気予防」という発想が、まだまだ根付いていなかったのです。《病気になったら病院に行けば良いとの文化》そのことを見落としていたため、一見素晴らしいアイディアも、全然売れませんでした。

 

理屈が合っていても、買う側がそれを理解していなければ、それはただの押し売りになってしまい、集客に結びつけることはできません。実態を正確に把握すること、そのために患者さんの声に耳を傾けることを怠ったのが、失敗の原因でした。

 

失敗から学んだこと

そんな失敗経験を活かし、私は次のことに気を付けています。そのおかげで、今ではピンチを抜け出すことに成功し、こうして皆さんに情報をお届けできるようにもなりました。実際に効果があるということです。

 

  • ・商品開発だけでなく、次の方法も同時に知ること
  • ・顧客のニーズにマッチした商品を開発する方法
  • ・その商品をターゲットに知ってもらう方法
  • ・そのをターゲットに体験してもらう方法
  • ・その効果をターゲットに実感してもらう方法

 

想像だけで商品開発をしても、地域のニーズとのマッチングがうまくはまらない限り、ヒット商品にはなりません。また、どんなに優れた技術や商品があっても、その存在を知ってもらえなければ何の意味もありませんし、知ってもらったところで実際に体験してもらえなければ、患者さんの利用に繋げることはできません。

新しい商品を考えるときは、上記のことを全てセットにして考えるようにしましょう。

 

お客様の声を聴くこと

ニーズにマッチした商品をつくるためには、お客様の声にしっかり向き合うことが一番です。整骨院は、お客様と接したり会話したりする機会に恵まれています。ここでニーズを探らないのは、非常にもったいないことです。

アンケートのような大げさな形をとると、患者さんも手間です。ちょっとした会話に常にアンテナを張り、ヒントを拾い集めることで、患者さんの真のニーズを探り当てていきましょう。

会話は、ただ間を埋めるために行うのではありません。常に、最高のビジネスチャンスであると考えてください。

 

好きな商品は勝手に売れていく

自分自身が商品を使い込み、一番のファンになること

どんな商品も、まずは自分で体験してその魅力や効果を実感し、一番のファンになりましょう。そうすれば患者さんにご案内するときもセールス的ではなく、本心から勧められるようになり、自信を持って説明することができるようになります。

広告で伝えるべきポイントも、自然と最適なものが分かるようになるでしょう。

 

常に進化し、情報発信し続ける

商品に常に変化を加え続け、長期的に魅力を発信すること

一度開発したからといって、安心してはいけません。

市場は常に新しいものを求め続けています。患者さんの声に耳を傾け、ヒントを獲得し、いつも商品の改善に活かすようにしましょう。「新商品」はどんな業界でもマーケティング戦略の基本です。

 

適切な価格設定を行うこと

優れた商品でも、それに見合った価格設定がなされていなければ、利用者は増えません。

まして整骨院は競合の溢れている業界ですから、価格設定は一層、気を付けなければならないポイントです。

ここでも患者さんとの会話が活きてきます。今考えている新商品は、どの程度の価格であったら利用してもらえそうでしょうか。しっかりとリサーチしましょう。

 

マーケティングの勉強をすること

他の記事でも繰り返し述べていることではありますが、「整骨院の売り上げを上げる方法」という枠にとらわれて考えてはいけません。どんな業界もビジネスであるという点で共通しており、そしてビジネスの基本はマーケティングです。基本を押さえていなければ、どんなビジネスも成功することはできないでしょう。

大学教授並みに詳しくなる必要はありませんが、簡単な本の一冊や二冊は読むなど、勉強する意思は常に持つようにしましょう。

 

まとめ

あさがお整骨院では、売り上げが下がってピンチに陥ったとき、「○○だろう」「※削除・という主観的な」→《自分目線の》思い込みを根拠にして施策を考えたことで、借金だけが増えることになってしまいました。大切なのは、常に患者さんの声に耳を傾け、データや客観的な情報に基づいて行動することだったのです。

その反省から、次のことが大切であると学びました。

 

  • ・商品開発だけでなく、次の方法も同時に知ること
  • ・顧客のニーズにマッチした商品を開発する方法
  • ・その商品をターゲットに知ってもらう方法
  • ・そのをターゲットに体験してもらう方法
  • ・その効果をターゲットに実感してもらう方法
  • ・お客様の声を聴くこと
  • ・自分自身が商品を使い込み、一番のファンになること
  • ・商品に常に変化を加え続け、長期的に魅力を発信すること
  • ・適切な価格設定を行うこと
  • ・マーケティングの勉強をすること

 

人の振り見て我が振り直せ、ということわざがあります。他人の成功と失敗から学びましょう、という意味です。成功する方法を学ぶのと同じボリュームで、失敗しない方法を学んでください。そうすれば、必ず良い結果が待っていることでしょう。

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